◆細川英雄『日本語教育は何をめざすか 言語文化活動の理論と実践』明石書店、2002年1月

日本語教育、特に「日本事情」の授業に関する論考。理論的な著作。

こ とばと文化をどのように日本語教育のなかに位置づけるか。いろいろと刺激的な内容が書いてあり、参考になることが多い。私はもともと比較文化も勉強してい たので、やはり「文化とは何か」という問題に大いに関心がある。本書では、あるモノや事に触れたときに、個人のなかに生じる「文化」認識、つまり富士山を 見て、「これが日本の山なんだ」とか歌舞伎を見て日本の伝統文化なのだと感じること、そうしたものを「文化」と呼ぶ。したがって、Aという人物には「文 化」と感じないモノが、Bという人物には「文化」と感じるモノもある。「文化」は各人各様に存在するというわけだ。だが、各個人が心のなかで「これが文化 なんだなあ」とおもっているだけでは、他者にはその人の「文化」観がわからない。そのために、自分の「文化」認識を表現することが大切になる。内言から外 言へ移すプロセスをことばと文化を総合する活動として、著者は主張し、その理論と実践を行っている。

何か特定の事象なり現象を 「文化」と称して、知識を一方的に教える教育よりも、たしかに魅力的だ。ことばの学習や生活のなかから、何かに気がつき、気がついたことを調べ、それをこ とばにして他者に理解させるといった一連の作業は、別に第二言語習得教育に限らず、どんな人にも重要なことになるだろう。

細川 英雄
日本語教育は何をめざすか―言語文化活動の理論と実践